起業したてのスタートアップがベンチャーキャピタルから資金調達する方法

オトコロドットコム代表の斉藤翔と申します。本記事は、はじめてベンチャーキャピタルから出資を受けたいと思っている方に向けて、何とかして最初の資金調達する方法を指南する記事です。

私が最初の資金(シード)を調達したのが2019年春ごろなので少し変わっている部分もあるかもしれません、またVCによって社風が異なるので全く通じない場合もあるかもしれません、それでも参考になる部分はあると思いますので、これから資金調達を始めようと思っている方は是非参考にしていただければ幸いです。

この記事の著者

オトコロドットコム(株)代表取締役 斉藤翔  世の中の検索疲れを解消したいをモットーに店舗比較サイト「オトコロドットコム」運営。設立1年3ヶ月で累計2億円を調達

はじめに

ベンチャーキャピタルからのはじめての資金調達はどの創業者にとって本当に難しいと思います。

日本でベンチャーキャピタルから最初の(シードステージ)資金調達をするにあたり、その過程や具体的なノウハウ、テクニックなどの情報が意外と少ないため、周りに相談できる創業者がいないと、どう始めていいのかわからないのではないかと思います。

そこでシードステージの資金調達について、知っていたらもっとうまくいったかもしれない、過去の自分に教えてあげたいと思う内容を共有したいと思います。

これを読んでいる起業家の中には、もしかしたら藁にもすがりたい思いで検索してる人もいると思いますので、少しでもそういう人の助けになればと思います。

※IT分野でのスタートアップを対象にしています。

結論から言うと本当に大事なのは1つ

「少なくとも30社程度(エンジェル含む)にプレゼンするまで諦めないことです。正直シードは、それ以外ないのではないかと思います。

基本的なところを抑えたうえで、それができさえすれば、何らかの資金調達が行える可能性は高いのではないかと思います。

さて本題に入る前に、準備しておいたほうがいいと思う項目をいくつかピックアップします。

事前準備

  1. 資金調達のバイブル「起業のファイナンス」徹底的に読み込んでおく
  2. 国内外のピッチ資料の作り方記事などを参考にちゃんとしたピッチ資料を作る
  3. 起業経験者やITの事業立ち上げ経験者にピッチして意見を聞いておく
  4. 自分を含む2人以上のチームを作っておく(少なくとも1人はプログラミングができる)
  5. 動くプロトタイプを準備しておく

これらの項目は必須ではないですが、1つでもできてないと調達できる確率が下がるのではないかと思いますので、できていない場合は、準備を整えてもらえればと思います。

私のシード資金調達時の状況

参考までに私の場合、シード資金調達活動を行う時点で下記のような状況でした、

  • 創業メンバー2名(ビジネス担当、エンジニア担当)+外注リモートエンジニア1名
  • プロトタイプあり
  • 未ローンチ
  • 似たようなビジネスモデルで若干収益あり

このような、まだまだ立ち上がったばかりの状態でしたが、エンジェル投資家とVC併せて5500万円の出資をしていただくことができました。

それでは、具体的なステップを紹介していきたいと思います。

ベンチャーキャピタルからシード資金調達をするための3つのステップ

ステップ1 まずアポを取る

ベンチャーキャピタルからアポイントをとるのは非常に難しいです。「アポをとることさえできない人をスクリーニングするため」などと言われていますが、良い悪いは別として結果的にそのような機能も多少はあるのではないかと思います。

私は最初に20社以上のVCにホームページの問い合わせフォームから連絡しましたが、KDDI Open Innovation Fundだけがお断りの返信をくれて、それ以外のVC(最終的に出資してくれたVCを含めて)からは一切返信がありませんでした。

最初の20通のHPからの問い合わせは、正直、私の送った文面が悪かった可能性が大きいです。なぜかその時は「自分のビジネスモデルは最高なので、全VCがこの事業について興味を持つだろう」と信じていました。今から考えると、同じ文面を私が受け取ってもたぶんスルーしていると思います笑

HPからのお問い合わせ連絡を一旦諦めたあと、色々な方法で連絡を試みましたが、あまりにもスルーされるので、いい加減自分のやり方が間違っているのではと考え始めました。そこで、いろいろ調べた結果Coral Capitalの記事にある「投資家へピッチメールを送る際のポイント」を読んで、文面を作成してみるとだいぶ反応が良くなりました。

上記の記事の重要な部分を引用しておきます。

メールの文面に含むべき内容は以下の通りです。

  1. 解決したい問題:どのような顧客のどのような問題に取り組んでいるのか示す。既存のソリューションだとなぜダメなのかも書いてあるとなお良い。
  2. ソリューション=サービス:サービスの内容を簡潔に示す。
  3. なぜ今なのか:なぜこれまでその問題が解決されなかったのか、なぜ今ならできるのか
  4. チーム:なぜあなたならこの問題を解決できるのか、ということを主要なメンバーのプロフィールを載せることで示す。それぞれがチームでどのような役割を担っているのか、どういうバックグラウンドなのかを書く
  5. 調達したい金額の大体のイメージ:これはマストではないが、事業相談ではなく資金調達の連絡の場合にはあると良い。VCによって出資できるステージが異なり、ステージが合わないとどんなに良い会社だと思っても出資できないということもある。あらかじめ示すことで、そもそも規模の問題で可能性のないVCを除外できる。

上記の内容が簡潔に示されていることで、投資家はメールだけでもある程度の情報をもとに検討することができます。

引用元:Coral Capital 投資家へピッチメールを送る際のポイント

ちなみに私が上記を踏まえて作成した文章はこちらです。

はじめまして、斉藤翔と申します。
突然のメッセージ大変恐縮です。

オトコロドットコムという「ローカル店舗版価格コム」のような店舗比較サービスの立ち上げを行っておりまして、もしよければ、シードラウンドの資金調達のご相談させていただけないでしょうか。

現在、プロトタイプが完成し、ベータテストでは月●●万円ほどの売り上げが上がっている状態です。どうぞよろしくお願いいたします。

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【事業概要】

■解決したい問題:
「場所×ジャンル」で検索しても 見やすい店舗一覧表が出てこない。

■ソリューション:
機械学習×クラウドソーシングで断片化した情報を整頓しひとめで分かる「近くのサービス業の料金一覧」を提供。

■サービス:
ニッチな施設も一目で比較!ローカル店舗検索サイト「オトコロドットコム」
一言で言うと「ローカル店舗版価格コム」、「次世代型Yelp」

■なぜ今なのか:
①クラウドソーシング&在宅ワークの普及

②機械学習の発達
により店舗比較コンテンツの製作コストを1/10程度になることで、5年前ではペイしなかったニッチなジャンルもデータベース化して収益化することができる

■チーム:
CEO 斉藤 翔:フランス滞在5年!クラウドソーシング&SEOのプロフェッショナル
エンジニア 武田 康臣:1.4億円調達!アフィリエイト・メディアに詳しいフルスタックエンジニア
その他1名エンジニア

■調達したい金額:3000万円(1社検討中のVCあり)

また、最初から一切出し惜しみせず資料を送るほうがいいです。「反応があってから説明したいとか、数字を見せたくない」と思いがちですが、出し惜しみするとほぼ返信が来ません。(自分の事業計画は最高なので、さわりの部分だけでVCが話を聞きたいと集まってくるだろうと私は思っていましたが、そんなことは残念ながらありませんでした汗)

アポの取り方に関しては、残念ながらサクッと解決できる方法はありません。地道にイベントに参加したり、友達に相談したりしながらなんとかアポをとるしかないかと思います。私は一応自分なりの方法を見つけることができました。

ステップ2 ピッチを磨く

シードの資金調達で私が重要だと思うのは、

  1. 担当者との相性(担当者のVC内での影響力や、その時のVCの方向性)
  2. 事業内容・市場規模
  3. チーム構成
  4. ピッチの見せ方

の4つです。1~3は、そんなに大きくは変えられないので、唯一資金調達活動を開始してから、大きく改善できるのは「ピッチの見せ方」になります。

ベンチャーキャピタルへのピッチ(プレゼン)を改善するためのテクニック

①本命のベンチャーキャピタルに行く前に少なくとも5回はVCまたはエンジェルにピッチすること

よく最初から本命のVCには行かずに練習ピッチをしてから本命に臨めと言いますが、これは本当にその通りだと思います。私は、何も考えずアポをとってしまったので、前半戦でチャンスを失ってしまいました。今考えると非常にもったいなかったと思います。

何度も何度もVCの担当者にピッチしてると、口頭で相手に伝わりやすい言い回しがだんだんわかってきます。また口がセリフを覚えるので、資料を見る必要がなくなり、相手の反応をしっかり観察することが出来るので、どこでいい反応をしたか、どこで悪い反応をしたかがわかるようになります。

②VCに指摘された内容や質問は次のピッチでさりげなく質問される前にフォローする

ベンチャーキャピタリストは経験豊富な方が多いので、いろんなVCにピッチをしていると、それまで想定してなかったような鋭い質問がたくさん飛んできます。全部とはいいませんが、なるほどと思った質問は、次のピッチの際に質問される前に補足で説明しておくといいと思います。

それを続けていくと最終的に突っ込むところがあまりないピッチが出来上がります。「突っ込むところがない=出資してくれる」では全くないですが、キャピタリストも断る理由がなかなか見つからないので、とりあえず次のステップに進める可能性がアップします。(とはいえ、最初のピッチであまり反応が良くなかった場合、次に行けたとしても難しい場合が多いような気がします)

次のステップに進んでいるVCの数がある程度あると、ものすごく心の支えになります。また、次のVCに行った際に進行中のVCの数や社名を伝えると確実にプラスの印象を持ってもらえるかと思います。

ベンチャーキャピタル側のシード出資に対するスタンス

シードに限ってだと思いますが、VC側も今の時点では当たるのか当たらないのかほとんどわからないと思うので、ベンチャーキャピタルの最低限の出資条件さえクリアすれば、

  • ビジネスモデルの筋が通っている
  • チームや経歴なども問題ない
  • ピッチの内容もちゃんとしている

となれば、あとは創業者とVC担当者のフィーリングが合うかどうかで決まるのではないかと思います。

つまりシード資金調達は、基本的な部分をしっかりと抑えていれば「アポを大量にとる力」「ピッチを改善する力」「諦めない心」の3つにかかっているのではないかと思います。その中でも、最も大事なのは結局は諦めないことではないかと思います。

そこで、次の章では、いかにして心が折れて諦めてしまうことを防ぐことができるのか私なりに考えた内容をご紹介します。

私が思う資金調達の最重要ポイント:心が折れないようにする方法

方法1:先にまとめてアポを取ってしまう

これは割と効果的ではないかと思います。一気に複数のアポをとることで、最初どれだけダメ出しされてくじけそうになっても、改善して次のアポに臨むしか道はないので、少しくらい心が折れても次に進むことができます。

また、アポの日程を固めておくことでVCからよく聞かれる「他のVCの反応はどうですか?」という質問に対し「いま絶賛訪問中でまだこれからです」と答えることができます。とはいえいきなり10社アポを取るのはちょっと怖いので、まず2~3社の反応を聞いて(99%絶望します)その反応を踏まえて内容を改善してから10社~20社アポを取るのがいいかと思います。

方法2:チームで臨む

チームの支えなしで、ベンチャーキャピタリストからのフィードバックに心を折られずにいるのはかなり難しいと思います。とにかく、1社ごとの反応をチームに共有したうえで今後の方向性を話し合うべきです。そういう時に頼れるパートナーがいないと、これから先も大変です。

何か厳しいことを言われても「大丈夫!全くわかってない!絶対見返してやろう」と言ってくれる仲間が本当に大切です。

マインドセット:30社回って1セットだと考える

絶対くじけそうになります。でも、この記事を読んだり諸先輩方の苦労話を読んだりして、なんとか諦めずに根気強く続けるしかありません。なので最初から数ヶ月間この苦しみに耐える心の準備をしておいて、万が一早く終わればラッキーと思っておくのがいいと思います。

参考までに私がVCまたはエンジェルに問い合わせた数を載せておきます。

連絡や問い合わせなどアタックした数 約200回程度
その内アポがとれた件数 27件
検討しますと言われた回数 8件(後半のアポに集中)
2回目のプレゼンを行った回数 3件
出資決定 1件

※エンジェルを含めると出資決定は2件

以上が、シード資金調達を行うための私なりの方法論になります。最後に「シード資金調達で私が陥った3つの過ち」をご紹介して終わりにしたいと思います。

シード資金調達で私が陥った3つの過ち

過ちその1:資金調達の難易度を見誤ってしまう

他のスタートアップの資金調達の過程ではなく「シリーズAで2億円の調達!」というニュースにばかりに目が行ってしまいます。そのスタートアップが、どれくらい時間をかけて何十社のVCを回り、どれだけ悔しい思いをしたのか、表には出てこないです。

そのため、他の起業家が簡単に資金調達しているように見えます。結果「自分も5社くらいあたれば1社くらいまともに検討してくれて、あわよくば出資してくれるのでは?」という誤った認識を持ってしまいがちです。(私はまさにこれで最初に打ちひしがれてしまいました)

資金調達は、難関大に入るより難しいとか、問い合わせがあったうちの1%くらいしか出資しないなど、いろいろ噂されていますが、実際、一筋縄ではいきません。

そこの難易度を見誤ってしまうと、VCから最初のお断りを受けたときに心が折れてしまいます。実際には、はっきり断られるよりも、ファンドの方向性と少し違うなど、やんわりと次に進む感じではない空気になって終わります。

過ちその2:ベンチャーキャピタルの反応が悪いと、自分のアイデアが悪いと思ってしまう

資金調達の苦戦度合いや、VCからダメ出しされまくることとビジネスの良し悪しはあまり関係ないのではないかと思います。

私が行った非常に優秀なシード投資すべてについて、私が尊敬する他の投資家は良くないと思っていました。~中略~ 素晴らしい会社は、最初は良くないアイデアに思えることがしばしばあります。~中略~ 他の投資家数人に経験について尋ねてみましたが、ほとんどの人がおおむね同じような経験をしていました。本当に大きな成功を収めた事例のほとんどでは、誰もが参入しようとするような競争率が厳しいシードラウンドについて、TechCrunchが記事にすることはありませんでした。

引用元:ブラックスワン・シードラウンド (Sam Altman)

Y CombinatorのSam Altmanもこう言っているように、世の中の大成功しているスタートアップは、ものすごい数のVCから否定されているのではないかと思います。

一般的な感覚だと、5社のVCにアタックして5社ともが煮え切らない対応だったとすると、普通は、事業の中身やアイデアが悪いと考えてしまいがちです。

これは人によるかもしれませんが、最初の段階でダメ出しされたからと言って、事業の中身やアイデアを大幅に修正したり改善しようとするのは、あまり良くないような気がします。この事業は間違いなく可能性がある!と確信しているのであれば、事業のアイデアを変えるより

  1. 相性のいい担当者に会う確率を増やす
  2. ピッチの中身とその方法を改善する

の2点の方が効果的ではないかと思います。

「10回挑んで箸にも棒にもかからないものは、30回やってもダメ」というのが一般的な感覚だと思います。エクイティファイナンスはその直感に反する部分があるのではないかと思います。20回やって上手く行く気配が全くなかったのに21回目で突然上手く行くのがVCからの資金調達ではないかと思います。

過ちその3:VCにきつく言われると心が折れて諦めてしまう

ベンチャーキャピタルからの資金調達のメリットはやはりまとまった金額の資金が手に入ることです。調達できるかどうかで今後の方向性が180度変わるので、VCからの反応をもろに受けてしまいます。VCが煮え切らない反応だったり、「この部分が検証ができていない」とか「このステージはあまりやってない」と言われると正直へこんでしまいます。

VCは面談している起業家のほとんどにNOと答えているので、断られる確率の方が高いということは分かっているのにショックは避けられません。

なのでVCからのフィードバックは、100%真に受けるのではなく、重要な部分だけ取り入れるのがいいかと思います。また多くのベンチャーキャピタリストが突いてくる質問に関しては、次のピッチでは質問される前に先にフォローすることが肝心だと思います。それを繰り返していくことで、ピッチの後に突っ込むところがなくなってきて、だんだん反応が良くなっていきます。

まとめ

長くなりましたが、以上が、起業したてのスタートアップがベンチャーキャピタルから資金調達する方法になります。なにか質問などあれば是非コメントを頂ければと思います。

 

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